Asian Lacquer Craft Exchange Program in Laos, 2013

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国際交流基金文化協力助成プログラム
Workshops & Lectures in Laos, 2013

2013年4月1日~2日
於・ルアンパパン美術学校
参加教員:約10名,学生:約15名, 民間の漆器制作者他: 約3名
 
レクチャー・ワークショップ内容
・漆とは何か (松島)
・近隣国の漆文化について (松島)
・日本の漆文化について (大塚)
・日本の漆工品の修復について (藤田)
・沈金ワークショップ (大塚・藤田・松島 他)
 
講師:
 藤田敏彰(漆造形家・保存修復家)
 大塚智嗣(広島市立大学)
 松島さくら子(宇都宮大学)
 日本からの参加者: 増山明恵(宇都宮大学)・Ken DILLON
 通訳 Xaysamone Phannalath
 
事業内容
 ミャンマーで8回にわたり行なってきた漆工芸交流事業の経験を活かし、伝統漆工芸が姿を消してしまっているラオスのルアンパパンにて、ラオスの漆工芸技術復興をめざし、日本やアジア各地の漆工芸技術を公開とワークショップによる交流プログラムを実施した。
 
 2011年11月に実施した第一回目の活動で得た現地事情を考慮し、事前に講師3名にて限られた期間でどのようなプログラムが可能で最も効果的か、何度も話し合い計画をたてた。講師のそれぞれの専門分野や教育経験を活かし、交流プログラムの内容を組み立てた。
 
 実施にあたって、今回は国際交流基金の文化協力助成プログラムにて助成を受けることができ、また現地では、MInistry of Information, Culture and Tourism, Department of Fine Artsの Dr. Boua Ngeun PHIMMACHAK, JICAラオス事務所の水野氏、前事務所長の戸川氏、友人のMs. Kinnaloneにもご相談にのっていただき、活動を行なうことができました。
 
1日目(2013年4月1日)
ワークショップ・レクチャー1日目(スライドレクチャーを中心に)
 まず、漆素材についてほとんど知識がない美術学校の教員と学生に対し、漆に興味をもってもらうことを最初の目的とし、まず漆とはどんな素材なのかを、画像を織り交ぜながら紹介した。また、日本や近隣国の漆器制作の様子や、漆による表現の展開について紹介した。日本やタイ・ベトナム・ミャンマーなどの近隣国の漆工芸を紹介するレクチャーでは、伝統的な漆器から現代作家の様々なサンプル作品を持参し手にとって見てもらった。
 大塚氏は、日本の漆文化について、縄文から現代まで日本人はいかにして漆を使用してきたのか、広島市立大学での植栽の取組みや活動などを織り交ぜながら紹介した。
 また、藤田氏は、漆工品の修復に関するレクチャーを行なった。いかに国の宝物を次世代に伝えていくか、日本でおこなわれている漆工修復方法と実例を紹介した。世界遺産に指定されているルアンパパンに居住する参加者はどう受け止めただろうか。現地に在住しているオーストラリア人修復家も来場し、知識を共有することができた。
 
2日目(2013年4月2日)
ワークショップ・レクチャー2日目(ワークショップを中心に)
 2011年11月に実施した第一回目の活動では、顔料と漆を練って色漆を調合することからはじめ、黒漆塗りの板に漆絵を描くワークショップを行なった。参加者の美術学校関係者は絵画に慣れ親しんでいるため、絵の具のように色漆で表現することを体験した。今回も漆への興味を深めてもらうことを目的に、ハガキ大の黒漆塗りの手板に沈金による平面表現を行なった。
 まず、自由に図案を考えていてもらい、その図案を線や点で表現するとどのようになるのか考え、日本の沈金刃で彫りの練習を行なった。参加者の中には木彫を行なっている人もおり、刃物の扱いに慣れているからか、スムースに彫進めることができた。彫りあがった手板に擦漆をし、真綿で金粉を蒔く。部分的には各色の顔料粉を蒔くこともできるように準備した。しばらくして漆が落ち着いてきたところで、拭き取ると、彫った文様の中にだけ金粉がとどまり、手板の黒色とのコントラストがはっきり浮かび上がり、参加者たちの驚きと感動の連続であった。
 
参加者からのコメント
・漆について学ぶことができてとても面白かった。
・新しい漆表現を体験できて有意義であった。
・もっと長い時間行なってほしい。
・また回数を重ねて行なってほしい。
・ラオスでは漆が手に入らないので、漆の入手方法を探ってほしい。
・新しいデザインを紹介してほしい。
 
今後の展開
 事業の参加対象者を美術学校の学生と教員を主に設定していたので、参加者に限りがあった。今後は早い時期から事業内容を広報し、開かれた現地活動にしていきたい。また、ルアンパパンに限定せずにプログラムを実施することで、多方面に伝えていくことができ、事業成果が期待できる。
 入念な事前調査を経て相手国の事情を把握し、どのような交流ができるか専門家を交え意見交換を行い、プログラムを見定めていく必要があると考えている。
 
その他
 
プログラムの合間に、2件の漆器制作工房を訪問した。1件はmani Lacquerwareで、美術学校教員であるMr.Ounheuane Soukaseumが自宅で数人の作業員を雇って制作している。もう1件は、Mr.TouyとMrs Feeの工房である。ここ以外にも、注文に応じ家庭で漆器を制作しているところもあるという。近年、ルアンパパンでほそぼそとではあるが、漆器作りは行なわれてはじめているようである。金箔が施されている伝統的なスタイルのボウルが、100ドル~300ドルとラオスの物価からするとかなり高額でありながら、ミャンマーのものに比べ塗りや作りこみ精度は高いものではない。今後、ラオスで継続的に漆工芸の生産と発展していくためには何が必要であるか、プロジェクトを通し考えていかなければならない。

参加者の皆さん
 
レクチャーの様子

 

日本の漆工品の修復について

 

沈金ワークショップ

 

参加者は夢中になってとりくんだ。
 
外部参加者の方も沈金に挑戦

レクチャーの様子

沈金のデモンストレーション

文様に沿って彫りをおこなう

教員の皆さんも取り組んだ

金粉を蒔く

金粉の拭き取り

作品鑑賞

出来上がった沈金作品

参加者全員で