Asian Lacquer Craft Exchange Program, in Myanmar
Workshops & Lectures 2012

2012年8月26日~28日
参加教員:約30名,学生:約60名
民間漆器工房関係者:約15名
漆芸技術大学(バガン)
 
講義:
 ・日本における漆工品の修復方針と意義, 漆工品の保存について(藤田)
 ・漆工品の修復実例紹介(藤田)
 ・漆器のクリーニング(藤田)
 ・漆塗膜・木地の接着と欠損部分の補修(藤田)
 ・ミャンマー漆器に使用される材料について(松島)
 ・諸外国への食器としての輸出に関する諸条件と問題(Dillon)
 
講師:
 藤田 敏彰 (漆造形家・漆修復)
 松島さくら子(宇都宮大学)
 Ken DILLON(早稲田大学)
 
参加者:
 陳淑華(台湾師範大学), 宮下智吉, 宮下明日香, 中川ちえ, 増山明恵, 岸田奈津希, 門馬加奈, 五月女晴佳
 
 漆芸技術大学での活動は7回に及ぶ。2005年当初は、大学側も当方も手探りではじまった交流であったが、お互いの意思疎通もとれ、大学の受け入れサポートのもと、有意義な交流となってきている。今回は、今までの交流で培った成果のもと、学生・教員全体制で望んでくれた。また、漆器工房関係者も多数出席した。
 
1日目(2012年8月29日)
・「Overview Japan-Myanmar Lacquer Craft Exchange research Project 2005-2011」7年にわたり交流を行っている当事業の活動内容を振返った。
・前年のレクチャーで行なった「諸外国への食器としての輸出に関する諸条件と問題」「ミャンマー漆器に使用される材料について」漆器生産者にとって重要な内容であると考え、おさらいをおこなった。日華化成の山本修氏より、漆用として開発した各色顔料サンプルをご提供いただいたので、それらを漆芸技術大学と来場した漆器工房の代表者5名に贈呈した。
・「日本における漆工品の修復方針と意義, 漆工品の保存について」漆造形家・漆工修復家の藤田敏彰氏に、漆工品修復の分類とその意義についてお話いただき、自身の取り組んだ修復実例を、多くの画像を用い紹介した。参加者に漆工品が破損した時にどのように修復していたのか質問してみたが、回答はまちまちで、修復方法が確立していない。中には割れた漆器を瞬間接着剤で補修していると答えた人もいた。修復というと、古くなった漆器をいかに新品のように見せるかということだと思っている人が多数であった。修復の様々な目的のもと、修復・保存・修繕・修理と目的にあわせた対応があることを認識してもらうことが大事である。
 
2日目(2012年8月30日)
・2日目は漆工品の修理デモンストレーションを主に行なった。まず、藤田氏により修復する漆器への乾式・湿式によるクリーニング方法について、参加メンバーの宮下氏にお手伝いいただき実演した。次にミャンマーの漆と小麦粉を使用し麦漆を調合し、剥離塗膜の接着、断裂部の接着補修を行なった。ミャンマーでは漆に小麦粉を混ぜることはないので、参加者は少々驚いていたようであった。また、欠損部の補修のために使用する下地材について紹介した。漆芸技術学校で保管している破損した漆器を例に、麦漆による接着補修を行なった。実演の手元がよくわかるように、画像をライブでスクリーンに映し出し工夫をした。
 漆芸技術学校教員や漆器業者から、漆や顔料の取り扱い、下地材についてなど、多方面におよび質問がでた。
 
 8回に及ぶ当交流事業で、毎回日本の漆技術や表現の紹介、漆に関する材料や漆の知識を伝達することを重ね、当事業に対する期待も大きくなってきていると感じている。ご協力いただいたミャンマー漆芸技術大学、漆器工房、日本からの協力参加の関係各位に感謝申し上げます。

 
レクチャーの様子
 
講堂は多くの参加者でいっぱいになった
 
ミャンマー漆を使用した漆工品の修理実演
 
実演の様子
 

校長やスタッフと打ち合わせ

破損した漆器の修理相談を受ける

割れなど破損した漆器類

レクチャーの様子

漆芸美術館にて漆工品の保存修復について質問を受ける

漆芸技術大学のスタッフと