Asian Lacquer Craft Exchange Program, in Myanmar
Workshops & Lectures 2009

2009年3月30日~4月1日
参加教員:約20名
民間漆器工房関係者:約10名
漆芸技術大学(バガン)
 
講義:
 ・漆器デザイン提案ワークショップ
 ・日本の漆芸作家による作品紹介
 ・日本の変塗について
 ・沈金について
演習:
 ・沈金刀による彫り演習
 ・金粉・金箔の埋め込み
講師:
 鳥毛清(漆芸家)
 松島さくら子(宇都宮大学)
 その他 日本より漆芸作家が参加(野口洋子・三好かがり・奥窪聖美・増山明恵・真船由佳)
 
1日目(2009年3月30日)
スライドレクチャー(漆芸技術大学教員約20名、漆器店より、約6名ほどが参加)
 
・ミャンマー伝統工芸学術支援事業ワークショップレクチャーの5年間を振り返って(松島)
 
・漆器デザイン提案ワークショップ・経緯説明(松島)
→後日、昨年デザインした漆器2点について試作段階であることを確認した。担当であったU Thin氏の退職により後任者に引き継いだが、状況把握しておらず現在進行が遅れている。昨年配布したプロセス図をもとに、試作中の2点について大きさ・木地の厚み・オリジナリティー・生産性に改善点あることを告げた。今年8月までに完成させることで同意した。
 
・3名の日本人漆芸家による作品紹介(野口洋子氏、三好かがり氏、奧窪聖美氏)
 日本の漆芸表現の取り組みについて話をした。宇都宮大学学生(増山明恵、真船由佳)による卒業制作を紹介した。
 
・変わり塗りについて(松島)
 変わり塗りの歴史や、日本の変わり塗りの産地について画像にて紹介した。また、文化庁所蔵及び東京芸術大学所蔵の変わり塗り鞘塗り資料を紹介した。主な変わり塗りの手順を画像にて紹介し、さらに唐塗り・ナナコ塗り・紋紗塗り等の様々な変わり塗り作品を持参し紹介した。日本には何種類の変わり塗りがあるのか、紋紗塗りの手順等質問がでた。
 
・日本の沈金について(鳥毛)
 沈金の歴史、制作の手順、沈金作品を画像にて紹介した。さらに、鳥毛氏持参の沈金手板を見せ、技術の説明を行うともに、沈金刀による彫りデモンストレーションを行った。ミャンマーのキンマ刀との形状や彫り方の違いを明確にした。ミャンマーは、押して彫るのが主であるが、沈金刀は引いて彫ることが多く、筆で描くように線の強弱をつけることができることや、また点彫りなど様々な彫り方を紹介した。
日本の金箔や沈金についてのビデオを教材として使用する予定であったが、機材の不具合のため断念した。
 
2日目(2009年3月31日)
沈金ワークショップ(鳥毛)
・鳥毛氏によるカワセミの沈金図案の置目取りからはじまり、まずミャンマーのキンマ刀による彫りを各々行った。白い転写用紙を使用するのは初めてのようで、見よう見まね各自写し取っていた。さすがに使用経験のあるミャンマーのキンマ刀による彫りは、テンポよく彫りが進んでいったが、均一でシャープな線による単調な彫りにすぎないことをと鳥毛氏が指摘した。
 
・次に、同じカワセミの図案を日本の沈金刀を使用し、同じカワセミの彫りを行った。沈金刀は鳥毛氏が持参したものの他、Daw Tin Mar Winが鍛冶屋に頼み、沈金刀を模して作ったものである。表裏を間違えたり、押して彫っている人もいた。慣れない沈金刀に戸惑いながらも、カワセミに線を入れていった。
翌日午前中に金箔及び金粉等を入れる予定であることを告げ、翌日までに彫りを仕上げてくるよう指示をした。
 
3日目(2009年4月1日)
沈金ワークショップ(鳥毛)
・鳥毛氏が、日本で彫ってきたカワセミの手板に、ミャンマーの漆にて摺漆を行い、ミャンマーの箔を貼り、拭き取り、沈金の工程を紹介した。また、日本で彫ってきた猫の図案の手板に、日本から持参した消粉を蒔き、拭き取る作業を示した。参加者の中には、普段行っているキンマの素彫りの皿やお盆等を持参した人がおり、それらに摺漆をして顔料を蒔いたり、消粉を蒔いて、ミャンマーのキンマ彫りにも、箔や粉を蒔き入れることが可能であることを示した。金を入れ背景の余分な金を拭き取ることで図案がくっきりと浮かび上がるが、背景の塗りが美しくなければ、せっかくの沈金表現が台無しであることから、塗りの技術向上を指摘した。
 
・前日行った、ミャンマーキンマ刀と日本の沈金刀による、2羽のカワセミに金箔を入れる予定であったが、準備した金箔に限りがあったため、持参した金粉(消粉)を入れることにした。各自、摺漆を行い拭き取り、金消粉を真綿にて蒔いていった。ミャンマーキンマ刀は先が尖っており、均一でシャープな線が彫れるのに対し、日本の沈金刀の形状は先端が丸くなっており、彫り跡はなだらかで金を入れると光を反射し、より金の輝きがよいことなど比較した。前日までの話を聞き、早速彫った図案に金箔を入れたものを持参してきた参加者(ニューバガンの漆器店の職人)がいたのには驚いた。
 
・校長及び、ミャンマー側参加者から感想や意見を伺った。新しい外国の漆芸技法を学ぶことができ、充実したワークショップ・レクチャーとなったとの意見が多数であった。5年にわたるこの交流事業をこれからも続けてほしい、日本の漆の技術をもっと伝えてほしいとの要望がでた。
 
・昨年と異なり、卒業式が間近に迫っていることから、教員はその準備や実務に追われており、次回開催時期を検討しなければならない。
 
・日本側講師と参加者からもそれぞれ感想と意見を述べた。

 

鳥毛氏による沈金ワークショップの様子

 

沈金ワークショップ

 

彫りの後、擦り漆をして金箔春作業

 

貼った金箔を彫りの中だけ残し、擦り拭いているところ

 

参加者も実際に彫りの練習を行なった

 

出来上がった作品を掲げて