コラム@ミャンマーの漆

ミャンマー漆器の加飾技法 キンマ - ka nyit 文: 松島さくら子

キンマとは?

日本語でキンマとは、タイやミャンマーで主に行われている漆の加飾技法(ミャンマー語でka nyit )のことをさし、漢字で「蒟醤」と書く。漆塗りを施した面に刃物で文様を彫り、色漆を埋めてから研ぎだし図柄を表現する技法なのだ。東南アジアでは広く、ヤシ科の植物のビンロウジの種子をコショウ科のキンマの葉につつみ噛む習慣がある。このビンロウジやキンマを入れる合子に描かれていた文様が ka nyitという技法で彫られていたからか、日本ではka nyit 技法をキンマと呼ぶ。ミャンマーの他にタイや日本でもこのキンマ技法が行われている。

12以上もの工程

 キンマ - ka nyit は12以上もの工程を経てつくられるミャンマー漆器を代表する加飾技法なのである。

 黒や朱漆を塗った面に下書きなどはせず、刀で文様を彫り込む。中心となる図柄は男性が彫り、その地模様は女性が埋め尽くすように彫りすすめる。
 パガンの漆器工房へ行くと、必ず若い女性が高床式の竹の筵の上で日がな細かい文様を彫る風景を目にすることができる。

 刀は鋼の角棒の先を尖らせたものでこまめに研ぎながら、押すようにして線を描く。日本の漆の塗膜よりもやわらかいので、ぼりぼりと彫れる。
 その他に直線を引くための針をつけた道具を使用して自由自在に緻密な図柄を描く。

トウモロコシの皮も籾殻も捨てることなく活用

 彫りあがったら、朱漆を全体に塗り込み、余分な漆をトウモロコシの皮で取り除く。
 右は、朱漆が乾燥した後、水をつけながら籾殻で塗面を研ぎ出しているところ。彫った凹みに漆が残り、みるみるうちに文様が浮かびででくる。
 トウモロコシの皮も籾殻も捨てることなく、有効に活用されるのだ。

 アカシア属(Azadirachta indica/アラビアゴムの原料あ)の木の樹脂を水に溶かしたものを全体に塗りマスキングし、次に色を入れるところを刀で彫っていく。
 刀は鋼の角棒の先を尖らせたものでこまめに研ぎながら、押すようにして線を描く。日本の漆の塗膜よりもやわらかいので、ぼりぼりと彫れる。
 その他に直線を引くための針をつけた道具を使用して自由自在に緻密な図柄を描く。

キンマ文様の色

 キンマに使われる色は、伝統的には朱・緑・黄だが、現在は青やピーコックグリーンなど多色使われている。色は朱・緑・黄の順番で入れる。
 色を入れるたびに水研ぎをして、マスキングをしてある部分の漆を落として文様をはっきり出だしていく。
 これは朱をベースに、文様を彫り込み、緑・黄の顔料を入れてたお盆。朱に鮮やかに顔料が浮かび上がる。このように、朱をベースにしたものと、黒をベースにしたものがある。



yun1.jpg漆器屋(Everstand )のワークショップ


yun2.jpg若い女性が細かい彫りをおこなっている


yun3.jpg刃物をたて、左の親指を押すように彫っていく


yun4.jpg

yun8.jpgキンマの行程見本 素彫りから色さしまで(Everstand)

yun5.jpg彫った文様に朱漆を塗込んでいる

yun6.jpgこれは緑の顔料を擦り込んでいる

yun7.jpgこちらは黄色

yun9.jpgトウモロコシの葉も捨てることなく漆をこそぐのに使っている

yun10.jpg籾殻を使って朱漆を研いでいる。彫った部分のみに朱漆が残る