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What is urushi?

漆について

 漆は、ウルシ科に属する樹の幹に傷をつけて出てくる樹液のことです。漆の樹は主に日本・韓国・中国・ベトナム・タイ・ミャンマー・ブータンなどの東アジアから東南アジアにかけて分布しています。日本や中国ではウルシ属のウルシノキ、ベトナムではアンナンウルシ、タイやミャンマーにはビルマウルシ属の樹があり、その樹液を塗布したものが漆工芸です。
 日本では、ウルシノキは岩手、茨城、新潟、福島、栃木、京都、岡山、広島などで採取されています。ほとんどが植林で、十数年で採取されますが、採取する年には、だいたい5月から10月くらいまでの間、十数回にわたって、幹に傷をつけ滲み出てくる樹液を採取します。
 採取した漆は、樹皮などのゴミを取り除き、生漆として使用します。また、攪拌して成分を均一にして粒子を細かくする「なやし」と天日などの下で水分を蒸発させる「くろめ」という工程にて精製し、塗りに使用します主成分はウルシオールで、空気中の酸素と化学重合し硬化します。一定の湿度と温度が必要なため、乾燥室などに入れて乾燥させます。いったん、乾けば酸にもアルカリにも強く、少々の熱にはびくともしません。
 日本の漆器には、黒と朱のものが多いですが、精製時に鉄粉を加えることで、漆と鉄が反応し黒く変化し、黒い漆となります。また、精製した漆に朱の顔料を加えて、朱漆を作ります。
 漆塗りを施した漆器には、日本では、蒔絵・螺鈿・沈金・平文・蒟醤・漆絵・箔絵・卵殻などの加飾が施されます。東南アジアの各地では、漆絵・箔絵・蒟醤・卵殻などが多く見られます。漆は、塗料としてだけでなく、型に布を貼付けて成形する乾漆技法として、また接着剤として金属粉や貝などを貼付けたりすることで、様々な加飾表現が可能です。

ミャンマーの漆

 ミャンマー語でミャンマー漆のことをティスィ(thit-si)といいます。Glute usitata (Melanhorrea usitata)という木の樹液です。ウルシ科ビルマウルシ属で、日本ではビルマウルシと呼ばれています。タイ北西部からミャンマーのシャン州にかけての標高1000メートルくらいのところに多く分布する他、ザガイン管区、パゴー管区、マンダレー管区、さらにカヤー州、カイン州、カチン州など広域にわたっています。主成分はチチオールで水分・ゴム質含窒素物からなり、ラッカーゼ(酵素)の働きにより空気中の酸素と酸化重合して乾燥します。乾燥には一定の湿度が必要となる。数日から1週間かかる場合もあります。いったん乾燥すれば丈夫で艶のある塗面をつくります。
 ミャンマーにおいて漆器は「ユン(yun)」と呼ばれています。産品は、キンマ(コショウ科の植物の葉にビンロウジの種子や石灰を包んで噛む嗜好品)を入れる筒型の入れ物(kun it)、発酵茶を入れるしきり付きの入れ物(lahpet-ok)、お供物用器(hsun-osk)、箱、皿、椀、盆などの器が多く、キャビネットや机などの大型の漆器も作られています。
 素地は、竹を編んだり捲いて成形し、下地及び塗りを施したものがほとんどで、馬の尻尾の毛を編んだ馬毛胎漆器や木製漆器もあります。
 加飾は、黒・朱などの漆を塗った面に、刃物で細かな彫り傷をつけていき、色漆や顔料をその傷の中に埋め込んで文様を表現する蒟醤技法(ka nyit)が多く使われています。金箔で文様を表す技法(shwe-zawa)、漆と骨粉や籾殻灰などを混ぜたものをレリーフ状に盛り上げる技法(thayoe)、過去の日本との交流から作られるようになったと言われている変わり塗り、卵の殻を塗面に貼付ける卵殻技法や、近年では黒漆の上に朱漆を重ねて塗り、研ぎだして下の黒漆を見せる根来塗り風の器も制作されています。
 漆器に描かれる意匠は、仏陀伝やジャータカ(仏教説話)、ミャンマーの神話の神々や動物、民間伝承、王宮の様子、草花をモチーフにした連続文様などをデザインしたものが多く見られます。

 

日本のウルシノキ

日本のウルシノキの葉(栃木県)

漆掻きの様子

滲み出る漆液(栃木県)

採取した漆(栃木県)

ミャンマーシャン州の漆樹

竹筒にたまった漆液(ミャンマーシャン州)

ミャンマーの漆液

ミャンマーの漆器に使用される胎

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