Asian Lacquer Craft Exchange Program, in Myanmar
Workshops & Lectures 2008

2008年4月3日~5日
参加教員:約20名
民間漆器工房関係者:約10名
漆芸技術大学(バガン)
 
講義:
 ・ミャンマー人教員の日本漆芸留学報告
 ・日本の蒟醤について
 ・中国の漆器産業について
 ・会津におけるデザイン開発事例
 ・タイの漆器産業レポート
演習:
 ・漆器デザイン提案ワークショップ
講師:
 松本達弥(漆芸家)
 松島さくら子(宇都宮大学)
 大塚智嗣(広島市立大学)
 その他 日本より宇都宮大学卒業生 安田温美・池田瑛子・若林由理が参加
 
1日目(2008年4月3日)
・漆器デザイン提案ワークショップ・導入(松島)
 
・ミャンマー人教員の日本漆芸留学報告(Daw Tin Mar Win)
 昨年までの経験から、現地スタッフも停電にならぬよう発電機の確保、机やテーブル、スクリーンなどの用意をしていてくれ、スムースに、レクチャーが行われた.
 
 今年は特に、バガンの主な漆器屋に参加するようアナウンスを行ってもらったので、Golden Bagan, Ever Stand, Mya Mon, Tun Handicraftsから、蒟醤や塗りの技術者など4名が参加した。受講人数は、教員と上級学年学生あわせて、約40名(入れ替わりあり)であった。
 
・漆器デザイン提案ワークショップでは、ミャンマーの風土・伝統と新しい漆器の可能性を探るという内容である。昨年行った漆器デザイン提案の発展ということで、実際に、バガンのホテル、或はレストランで使用するものという場面設定をし、誰が・いつ・どこで・どのように使うものなのか考えてもらい、ワークシートを用意し、各自イメージを膨らませる導入を行った。デザインの一部はサンプル制作し、可能ならば量産し、実際にホテルやレストランで使ってもらうことを周知した。
 
 Daw Tin Mar Winによる、日本での漆芸留学報告を行った。日本で制作した作品や収集した資料を展示し、80枚程度のスライドを用い、日本での活動を発表した。特に日本での生活の様子、乾漆やぼかし塗りなどの技法習得に関する手順などを詳しく説明した。
 
2日目(2008年4月4日)
レクチャー
・日本の蒟醤について(松本)
 スライドを用い、蒟醤の歴史変遷について、日本に伝来した蒟醤について、そして日本で作られるようになった蒟醤について講義を行った。また、蒟醤刀、工程を示した手板、彫漆作品を展示し、現代の日本の蒟醤作品の技法を詳細に紹介し、彫り方や深さ、色漆の用い方等多彩な表現について紹介した。受講者はミャンマーの蒟醤との相違点や共通点など、比較することができたと思われる。
 
・中国の漆器産業について(大塚)
 広島市立大学の大塚氏による、中国漆芸視察のレポートを行った。中国の各地(北京、上海、四川省、貴州省他)の漆器産業を中心とした内容であった。ミャンマーと国境を接し、大きな影響をもつ中国の漆器産業について知る良い機会であった。
 
・タイの漆器産業レポート(宇都宮大生アシスタント)
 宇都宮大学の学生・卒業生による、チェンマイの漆器産業見学レポートを行った。どのような漆器があったか、値段やデザイン、技法はどうであったかなど、購入した品を見せて紹介した。
 
ワークショップ
・漆器デザイン提案ワークショップ
 
・宇都宮大学の工芸デザイン授業の紹介と会津におけるデザイン開発プロジェクトについて(宇都宮大アシスタント)
 
・宇都宮大学で行われている工芸デザイン提案授業の内容を作例をあげながら紹介した。アシスタントによる授業で作成したデザイン画を持参し、デザインのコンセプトや経緯を発表した。
 
・アシスタントが取り組んでいる会津におけるデザイン開発プロジェクトについて、新しいデザインの漆器をどのように生み出していくのか、その経緯や取り組み例について説明した。
 
 上記の取り組みの説明を受け、新しいデザインを考える視点やプロセスを理解し、ワークシートに沿って考たアイデアを発表してもらった。内容は、まだまとまりがなく、不明瞭な箇所が多かった。日本側講師からは、ホテルやレストランで使用すると想定し、デザインや用途を指摘した。
 
3日目(2008年4月5日)
ワークショップ
・日本の蒟醤技術紹介(松本)
 まずスライドを再度表示し、蒟醤の変遷・日本の蒟醤技法に関するおさらいと行った。デモンストレーションとして、蒟醤刀の説明、彫りの種類、彫り方を実際にミャンマーの漆塗り手板にて実演した。受講者は作業を見ながら、ミャンマーと日本の彫り方の共通点や相違点を確認していた。また、彫漆の作品の彫りでは、何層にも塗り重ねた色漆が、彫りの深さによって変化してでてくるのに関心をもっているようであった。蒟醤工程の手板の中で、彫った後に塗りを施した状態のものを、炭で研ぎ、だんだんと彫った紋様が現れてくるプロセスを紹介した。この点で、日本の炭を使い作業にて可能な精妙な表現と、ミャンマーの糊でマスキングをして彫った後顔料を蒔き洗い拭う蒟醤との、炭を使わないミャンマーの蒟醤との相違点がうかびあがり、受講者の関心をよんだのか、質問が飛交った。
 
・漆器デザイン提案ワークショップ(発表と意見交換)
 前日ワークシートに沿って考たアイデアについてでた意見をもとに改善し、あらかじめ渡しておいた、デザインボードにデザインを描いたものを発表してもらった。昨年同様、なかなか既存のイメージから抜け出せずに見慣れた形状を提案する人が多かった。また、「個性」あるいは、「特徴」という言葉が通じず(使い慣れない言葉なのか意味が伝わらない)、ミャンマーの風土・伝統と新しい漆器の可能性を探るというワークショップの内容を理解せず進めていると感じた。今までにないデザイン・新しい価値観ということが必要とされていないのか?考える機会すらないのか?今さらながら、商品化までの道のりは長いと感じた。発表した受講者のうち、ホテルのテーブル上で使用するものを提案した人、ホテルの部屋などで使用するものを提案した人とに分け、グループで「ホテルのレストランのテーブルウェアー」と「ホテルの部屋を演出もの」とを考えるように指示した。
 日本人講師からだけでなく、漆器制作の技術者からも、様々な技術的な点に関する意見や、デザイン・用途・機能性に関する意見など飛交い、活発な意見交換ができた。

 

松本達弥氏による蒟醤と彫漆ワークショップ

 

ワークショップ

 

第4回ワークショップ・レクチャー

 

レクチャーの様子

 

デザインの考案

 

教員による漆器デザインの提案